『SYM-BOLIC XXX』オフィシャルインタビュー

●「SYM-BOLIC XXX」は、「これまでの、そしてこれからのVALSHE」を様々な面で追求した作品ということですが、改めてVALSHEのアーティスト性や音楽性を省みて制作していった作品なのでしょうか?

VALSHE:  

「SYM-BOLIC XXX」についてはそこに終始して制作していきました。今回はちょうど100曲目ということで、改めて1曲目から99曲目を振り返った時に、自分目線のVALSHEらしさだったり、客観的に見たVALSHEらしさというところを追求して、音楽面をどうしていこうかと考えたところがスタートになっています。

●制作は昨年のYAKUMOのライブが終わった後からですか?

VALSHE:  

具体的に考え始めたのはYAKUMOのライブが終わった後です。でも2017年にリリースしたフルアルバム『WONDERFUL CURVE』を作り終えた辺りで、「2019年の1発目に100曲目を出したい!」と決めていました。それを踏まえて、去年はライブを絡めた上で99曲目までを発表していこうと想定して動いていましたね。

●100曲目、そして来年はデビュー10周年ということで、やはりその辺りを意識される部分が強かったのでしょうか?

VALSHE:  

そうですね。やっぱり10年目だったり、10周年イヤーというところは意識していました。

●“客観的に見たVALSHEらしさ”というところも踏まえて追求していったというお話ですが、ライブを拝見しているとファンの方との距離感がどんどん縮まっている感じがします。ファンが求めるVALSHE像みたいなものも作り上げられているんじゃないかと感じるのですが、そこに対するある種の答えみたいな部分も今作には表れているのでしょうか?

VALSHE:  

「SYM-BOLIC XXX」のキャッチコピーは、「象徴が、一つとは限らない」と打ち出しているんですけど、まさしくその言葉の通りで、自分を応援してくれている人であったり、なんだったら身近な人にとっても、「VALSHEの音楽ってこういうもの」というイメージが結構バラバラだなと感じていて。すごく分かりやすいところで言うと、「VALSHEってすごくロックなサウンドをやってる人」ってイメージの人もいれば、長らく応援してくれている人だったり、表題曲以外の作品も聞いてくれている人にとっては、「いやVALSHEはファンタジックな音楽の人だよ」ってイメージする人もいたり。そこって二分化しているところで、自分自身でも常々そう感じながら活動していたんですけど、今回99曲目までを聞き直してみて、「実際その通りだな」って改めて実感したんです。だけど、そのどちらだけが正解ってことでもなくて、人それぞれのVALSHE像をこれまで作りあげてきたんだなって思った時に、ここでいわゆるデジタルサウンドのど真ん中を打ち出すのって面白くないなって思ったんですよね。わざわざ100曲目でそれをやる必要があるのかなって。それなら多くの人が知っているであろう既存曲の、例えば「Butterfly Core」だったりでいいと思ってしまったんですね。最終的にはこれまでの総括というよりも、「101曲目を期待してもらえるようなサウンドを作りたい」という気持ちで作り上げていきました。

●曲先で作られていったんですか?

VALSHE:  

今回初めて表題楽曲については身近な人間だけでのコンペをしました。サウンドプロデューサーの佐藤瞬さんと、VALSHEと、これまでにもVALSHEに多くの作品を提供してくれているdorikoの3人で、昨年、「いついつまでにあなたの思うこれぞVALSHEって曲を持ち寄りましょう」っていう会を設けて、ディレクターも加わって試聴会を開き、最終的に佐藤瞬さんのデモを選びました。

●数曲持ち寄ったんですか?

VALSHE:  

1人1曲ずつです。

●曲の世界観は3人バラバラでしたか? それとも近かったですか?

VALSHE:  

みんながみんなVALSHEのヴォーカルを理解して曲を作ってきてくれていたので、自分自身はもちろんなんですけど、これは違うだろうって曲は1つもなかったですね。ただ100曲目を語る楽曲を受け手にどういう印象を持って欲しいかだったり、自分の希望だったりに一番近しいサウンドは?って考えた時に、今じゃないなってことで自分で自分の曲を落としました。

●佐藤さんの曲を最終的に選んだ一番の決め手は?

VALSHE:  

大きく2つあって、1つは3曲中この曲が抜きん出て明るかったんですよ。他の2曲は例えるとすごく荘厳なイメージで、過去の作品でいうと「DISPLAY」だったり「RAGE IDENTITY」だったり、重厚感のあるサウンドだったんです。意図としては、よりアニバーサリーってところを重視したサウンドメイキングになっていました。一方、瞬さんのデモはこれまで99曲歌ってきて、「バル次これ歌ってみろ」って気持ちで作ってきたと。そういった背景もそうですし、最大の理由としてさっきお話ししたアニバーサリーってことに対して、受け手に盛り上がって欲しいのか、それとも100曲目だぞって重く捉えて欲しいのか、自分はどっちなんだろうって考えた時に100曲目はやっぱりお祭り感があって欲しいな、喜んで欲しいなって単純に思ったんです。それであればいつでも(ライブなどで)歌える楽曲にしたいなと思ったんですよね。そのビジョンにハマったのがこの楽曲だったというのが大きな決め手です。

●歌詞はVALSHEさん自身のことを投影しながら綴っていったのでしょうか?

VALSHE:  

歌詞についても100曲目ということで、99曲目までの歌詞を何度も見直して、気張りすぎる必要はないけど、やっぱり100曲目だからこその歌詞を書きたいってところがありました。結局VALSHEはシンガーとして聞き手に何を発信していきたいんだろう?ってことをすごく考えたんですけど……。そんな制作期間中、語弊を恐れずに言えば、こんな環境で作りたくないって思った時期があったんですよね。

●それは制作期間中のどのくらいのタイミングの話ですか?

VALSHE:  

「SYM-BOLIC XXX」を制作し始めた頃、それこそ作詞をこれからしましょうっていう段階で、「この環境で自分は制作をしたくない」と思っていて、それが変わらないのであれば、自分に変えられる力がないのであれば、なんだったら「SYM-BOLIC XXX」を出さなくてもいいとすら思っていて、心が折れていたんですね。実際歌詞が書けなくなってしまって、これはどうしたもんかなって思いながらしばらく過ごすことになるんですけど。でも心境的には作りたいんですよ。100曲目の作品を良きタイミングで出したいという思いは勿論あるわけで。

●そんな状況からどうやって完成まで辿り着いたんですか?

VALSHE:  

99曲目までの歌詞を振り返って、「自分の大事にしていたところって、根源は“反骨精神”だな」ってところが見えてきたんです。過去の作品の中では自分が辿ってきた歴史を書いていたり、その時々の心情を書いている歌詞がたくさんある中で、デビュー作だったり、大事な時だったりの作品を読むと、見方によっては強がりなんですけど、どんな状況においても「諦めたくない」って気持ちを歌っていたんだなって思ったんです。そう気づいた時に、自分自身がここで折れずにこの作品を完成させることが出来たら、聞き手に対して一番伝えたいことが伝えられるのかなっていう風にも思えてきて、諦めずに制作を継続していった結果、歌詞が仕上がった頃にはまわりの環境も変わったんですよ。
明日が明るいかは分からないし、一日寝たところで何かが大きく変わるわけでもないし、手放しで未来は明るいねっていうのはどうしても自分の発信したいこととは違っていて。だけど「そうだね。暗いよね、良いことなんてないよね」って言いたいわけでもなくて。しんどい時や苦しい時に自分自身が諦めず続けていれば変わることがあるかもしれないしって、やっぱり聞いてくれる人たちの背中を押したかったんですよね。自分自身にとっても、待っていてくれる人がいることが頑張れる一つの理由だったりもするので、お祭り的な明るいサウンドに乗せてそういう思いが伝わっていけば、100曲目としての意味も価値もあるのかなって考えています。

●VALSHEさん自身の「信念」や「覚悟」みたいなものが感じられると共に、現代に対してのメッセージ的なものも感じられたのですが、その辺りは意識していませんでしたか?

VALSHE:  

根本的に自分は自分の目で見たものしか信じないし、自分の耳で聞いたものしか信じられないですし、結局流されていいことって一つもないよねと思っていて。自分以外の人に変わって欲しいなって期待しながら日々生活していくのは簡単なんですけど、果たしてそれで変わったことあったか?って思いますし、やっぱり自分が変わらないと人や環境は変わらないと思うんですよね。物事は全て人の言葉ではなくて、自分の心が決めることだと思うし、でもそれは決して自分以外の人にもそうして欲しいというメッセージではなくて、あくまで自分の考えはそうだということが歌詞に表れているのかなと思います。

●歌詞の中の「自己犠牲のせいで無駄に死んでいく そうじゃないな 貫くことって」というフレーズが印象的でした。VALSHEさん自身思い当たる節があるのでしょうか?

VALSHE:  

ありますね。それこそちょっと煮詰まってしまった話を先ほどしましたけど、色々な人たちと協力し合いながら助け合いながら活動させてもらっている以上、それを妥協とは言わないけど自分本位なだけで物を作ることはできないし、そうはしたくないと思っている中で、一歩引き下がることだったり、譲ることであったりって日々あると思うんですね。そんなある時、「あれ?このタイミングで自分自身どこまで許してよかったんだっけ?」って疑問に思って、「いや、もっとデビュー当時は確固たる意志があって、絶対譲らなかったよな」って。それが若さと言ってしまえばそれまでなんですけど、あれも許した、これも許さなきゃっていつの間にか自分自身が黒にも白にもならないような、自分が嫌いだった人間になっていってる気がしてすごく苦しかったんですよ。「許す」という言葉が適切かどうか分からないんですけど、根拠なく何となく流されて許したことによって、それが大きな失敗を招いたとしたら、「自分が譲ったことに何の意味があったんだろう?
誰も得してないじゃん!」っていう。無駄にその場を荒らさないように、自分の心を殺した結果みんな死ぬっていう。それって意味ないなって感じることがあり、そういうところがこのサビの歌詞には出ていると思います。

●「大改変が起きたところで262が揺るぎはしない」というフレーズは、どういう意味があるんですか?

VALSHE:  

自分が「まさにそうだな」と思って信じている法則で、『働きアリの法則』というのがあるんですけど。全体的な分母が100匹だろうが10000匹だろうが変わらずに2割のアリがよく働き、6割のアリは普通に働き、残り2割のアリはサボるっていう、そういう法則があるんですね。それって人間も一緒だなってつくづく思っていて。だからどんな大改変が起こってもその法則は変わらないし、どこで投げやりになったって一緒なんだよっていう。1サビで歌っているように、自分自身が変わっていくしかないし、だからといって諦める理由にはならないってことをここでも歌っています。

●タイトル表記にはどういうこだわりを込めているんですか?

VALSHE:  

今回テーマにしている「象徴」というキーワードと100曲目というところから、まず「SYMBOL」という単語が最初に浮かんできて、そこはテーマとして冠にしたいと思いました。そして、「象徴が、一つとは限らない」というキャッチの下、「XXX」のところは人によって当てはまる言葉が違うだろうし、あえて明確にしたくないという思いでこういう表記にしています。

●「バル次これ歌ってみろ」という思いで佐藤さんがデモを作ってこられたということですが、実際歌ってみていかがでしたか?

VALSHE:  

ヴォーカルレコーディングの前にやったギターやベースをレコーディングしたオケを聴いた時に、「これ生演奏で再現できないよね?一体ライブでどこ弾くつもりなの?」って笑っちゃうくらいサウンドのせめぎ合いというか、合間合間を縫ってすごい音数を重ねたオケになっていたので、その時点で非常に乗せていただいていて(笑)。だから自分のレコーディングの時には気持ち的にも「お祭りにふさわしいものを録るぞ!!」っていうような心境に切り替わっていて、制作にも100%集中出来る環境が整っていたので、非常に楽しかったです。

●そうなるとヴォーカルレコーディングはそんなにテイクを重ねずスムーズに終わりましたか?

VALSHE:  

レコーディンのテイク数は全曲一律で、基本的に4本以上録らないんですよ。それはデビューからほぼ変わっていないですね。サクサクって進んだ時に、終わるのが嫌だって顔を自分がしていたら、「よしボーナストラックを一発録りしよう!」って俊瞬さんが言ってくれる場合も稀にありますが、基本的には毎回4本ですね。

●それは新鮮味を失いたくないという理由からですか?

VALSHE:  

それもありますし、前もってプリプロで「今回の曲はこうだ」って固めた上でレコーディングに臨むので、スタジオは再生する場所だと思っているんですよね。レコーディングを重ねながら試行錯誤するタイプの方もいらっしゃると思うんですけど、自分に関してはそこで悩むのは違うと思うし、それ以上回数を重ねていいものが出てきたり、歌い方が変わるタイプのヴォーカリストではないので4本以上は録りませんね。

●髪型や髪色、衣裳など今回のビジュアルは、ご自身にとっても、ファンにとっても、最もVALSHEらしいというイメージなのでしょうか?

VALSHE:  

今回は音楽の制作以上に「これぞVALSHE」ってものにテーマを集約したようなビジュアル作りをしています。自分自身「VALSHEってどういう感じだろう?」ってパッと思い浮かぶのってやっぱり金髪なんですよね。だけど、過去を振り返ってみると金髪って意外と少ないんですよ。1stシングルも赤髪ですし、そんなに金髪にしていないんですけど、スタッフ間でも何故かそこだけみんな一致していて。もちろん黒髪が好きとか赤髪が好きとかそれぞれ好みはあると思うんですけど、でも「金だよね」ってそこは満場一致でした。今回は金髪になった時にコントラスト的に一番綺麗だと思う色合いだったり、VALSHEのロックな要素とファンタジックな要素を全て詰め込んだようなジャケットワークやミュージックビデオになっています。

●イラストヴァージョンもファンの方達に喜ばれそうですね。また今回お店によって異なる特典カードも、イラストヴァージョンも含め豊富ですね。

VALSHE:  

そうですね。今回の特典はすごく自分でも楽しんでいて、兼ねてからいつか実現出来たらいいなって思っていた1つなので嬉しいです。

●ミュージックビデオは楽曲のテーマを分かりやすく表現されているなという印象でした。企画自体VALSHEさんが作られたものなんですか?

VALSHE:  

はい。長らくご一緒させていただいている監督さんなので、多くの言葉は必要ないってところでは前作と一致しているんですけど、ただ今回に関しては撮っている時点の映像で完成が見えていたので、特に満足しています。視覚的な部分が多いんですけど、自分自身がイメージしていた以上に映像になった時のパキッとしたコントラスト感だったり、羊とヤギのシーンも頑張っていただいているので、作品として楽しんでいただきたいなと思っています。

●2曲目の「Prey」はdorikoさんの作曲、VALSHEさん作詞の作品ですね。

VALSHE:  

まず今回全体のテーマとして、100曲目であり、アニバーサリーイヤーでありってところで、収録曲全てにおいて1〜99曲目を踏襲した上での「懐かしいよね」っていうサウンド感には絶対したくないと思って、100曲目から103曲目までを聞いた時に、「100曲目だけど新しいことをする気がVALSHEはまだまだあるな」って感じてもらえるものにしたいと思ったんです。そうした上でこの「Prey」に関しては、2017年のアルバム『WONDERFUL CURVE』を作った頃に、洋のサウンドを取り入れたいという希望を持っていて、だけどこのアルバムを作っていた段階では「今じゃない」という話になったんですよ。そこで、当時は機を待とうということになって一旦温めることにしました。その後2018年は10年目を見据えたサウンドということで和を取り上げた作品を作って、そして今回「いよいよ、ここだろう!」ということで、これまでVALSHEの音楽には一切なかったアメリカンヒップホップってところに着目して作っていったサウンドで、dorikoには割と明確に「こういうサウンド感の、こういうものが欲しい」とお願いして作ってもらいました。

●歌詞は、曲からインスパイアされた内容になっているんですか?

VALSHE:  

これも全部紐づいてくるものなんですけど、「濁すのを止めたい!」と思っていて。今までも濁していたわけではないんですけど、気持ちの上でより自分自身が言いたいこと、書きたいことをもっと鮮明に伝えていきたいと思うところがあって、そういう部分がしっかりと各曲に表れていたらいいなという中で作詞していきました。今回自分が作詞した3曲に関しては、「自分自身はこういう人間であり、こういうことを発信していきたいんだ」ということに自分自身改めて向き合った結果生まれてきた歌詞になっています。

●サウンドは非常にクールで、聞いていてファルセットと地声の使い分けが絶妙で心地よかったです。歌ってみていかがでしたか?

VALSHE:  

特筆すべきところはオケにベースが入っていないんですよね。これは結果論なんですけど今回4曲中2曲ベースがない楽曲になっていて、その分多重コーラスで埋めたり、そのコーラスについても洋物のコーラスワークを取り入れているのがすごく新鮮ですね。そういう意味ではこれまで立ち回っていないヴォーカルワークというか、いつもだったらやらない立ち回りでレコーディングをしていく過程は純粋に新鮮だったし、100曲目にしてそういう挑戦が出来るっていうのが素直に嬉しかったです。

●「魔女裁判〜imaginary nonfiction〜」はゴシックファンタジーというか、ダークファンタジーな世界観ですね。

VALSHE:  

この楽曲はまず自分でサウンドを作るとなった時に、VALSHEを大きく2つのイメージに分けた時のロックな要素とファンタジックな要素の、ファンタジックな方を1曲入れたいと思って作っていった曲になっています。

●歌詞は、ファンタジックな雰囲気を漂わせたストーリー性のある内容でありつつ、世相に対する皮肉的なものも強く感じられましたが。

VALSHE:  

端的にいうと、事なかれ主義を断罪している歌詞ですね。それこそこの曲も色んなところに紐づいているのですが、自分の目で見たことしか信じないし、聞いたことしか信じないよってところにおいて、そうでない人が多いなってところであったりとか、対岸の安全な場所から無関係な人たちが何か言っているなっていう場面において、自分自身はそれが目の前の悪人よりももっと悪質に感じるんですよね。そういう人や状況を見て過去のVALSHEだったら、「人には色んな立場があって、色んな環境があって、守らなきゃいけないものがあって、だから色んな考え方、見方があると思うんですけどね」って濁したと思うんですよ。でも、それはもう止めようと思った最たる楽曲になっています。自分にとって何が良くて、何が嫌なのかということを曖昧にして聞き手に渡していくのってやっぱり良くないなと思って。何故自分は断罪したいとまで言っている対岸の人たちの顔色を気にしなきゃいけないんだ!と思って書いた曲になっています。そして、「そういうことにモヤっとする人多いですよね。この曲を聞いてスカッとしてくださいね」と、聞き手に向けて送り出した曲になっています。

●レコーディングはいかがでしたか?

VALSHE:  

これはすごく楽しかったですね。それこそサウンド的にもダークメルヘンというかゴシカルな要素で、チェレスタだったりトイピアノだったりの音色がそもそも好きですし、歌詞に込めた本質がありつつも、ちょっとファンタジックにお伽話的に可笑しく書いているので、ヴォーカルはその世界観に沿った形で、今回の中で一番ウキウキしながらレコーディングしました。

●「空腹」はレーベルメイトの焚吐さんとの初コラボ作品ですね。どういう経緯で制作することになったんですか?

VALSHE:  

遡ること2017年に「MONTAGE」をリリースした際にやらせていただいた、とあるリリースイベントでラジオジャックという企画がありまして、そこにゲストで焚吐に出てもらったのが最初でした。それまではレーベルメイトに焚吐というアーティストがいるという認識だけだったんですけど、「MONTAGE」のリリース時にちょうど焚吐もリリースタイミングで、お互いの盤を交換し合う流れがあったんですよ。そこで初めて彼のアルバムをしっかり聴くことになるんですけど、根深いところまで追求しない段階で、「なんか自分と似た匂いを感じるな」という気がしたんです。歌詞の端々から見える思考がふんわり近そうな感じがするなって思いながら好きで聞いていたんですよ。それで2018年に再び自分のリリースがあった際に、また同じようにラジオジャックの機会があったんですね。その時に焚吐がVALSHEのCDを一般の人と同じように買って、抽選会に参加してくれていたのを偶然スタッフが見つけて捕まえたんです。それで急遽「ゲストで呼ぼう!」ってなって。プライベートで来ていたにもかかわらず、突発でゲスト出演してもらったんです。その時に初めてお互いのスタッフ間で焚吐とVALSHEで何かコラボできたら面白いねって話が持ち上がって、それで2017年から2年越しに今回新しいサウンドを取り入れていきたいという流れもあり、焚吐だったら何か面白いことをしてくれるんじゃないかってことで作曲をお願いしました。

●最初の段階からポエトリーを取り入れた楽曲だったんですか?

VALSHE:  

最初に「作曲をお願いします」ってことでディスカッションの場が設けられた際に、「VALSHEさんにポエトリーみたいなことをさせたいんだよな〜」みたいなことは焚吐がポツリと言っていたんですけど、実際どういう曲を作ってくるのか、色んな質疑応答があった後、こちらから指定は全くせずお任せで出来上がってきたのがこの「空腹」でした。完成形は、曲と歌詞と合わせて上がってきた初稿デモのままですね。

●作曲をお願いしたということでしたが、デモが上がってきた時点で歌詞も付いてきたということですね。最初に聞いた時の感想はいかがでしたか?

VALSHE:  

びっくりしました。自分に合致するかは分からないと思いましたけど、めちゃくちゃ曲はかっこいいなと思いましたね。そんな中で自分がなぜ作詞をお願いしなかったかというと、VALSHEの過去の作品を見返した時に、VALSHE自身か、VALSHEとの関係性が成熟している人間以外作詞ってしてきてないんですよ。そこは自分自身のマイルールではあったので作曲のみお願いしたんですけど、ディスカッションの場での焚吐の話を聞いていたり、作詞に至るまでに電話やLINEでのやり取りで自分たちの活動の根源や核になるところを擦り合わせたりした時にシンプルに気が変わったんですよね。任せていいかも、焚吐ならVALSHEの歌詞書けるかもなって。だからその段階で「歌詞を書くかは任せる」って言ったんです。そしたら最終的に両方上がってきて、その時に電話で、「これはどういう意味?これはどういうつもり?ここについては歌詞だけを捉えた時にVALはこういう風には思ってないんだけど、焚吐はどういうつもりなの?」っていうところだったりを細かく詰めて、120%納得した上で、「曲と歌詞はそのままいきましょう」って落ち着いた感じでした。

●それは相当長電話になりましたよね!

VALSHE:  

そうですね。でもこれは過去にはなかったと思うんですけど、曲の話をあまりしてないんですよ。例えばどういう曲を作っていこうかとか、どういう歌詞を求めてますかってところを、通常の制作だとまずそこからの流れになるんですけど、焚吐とは全然そういう話はせず、例えば、「自分はこういう時本当に嫌になります。自分はこういう人間に対してこういう風に思います」っていうような主観と主観の落とし合いみたいなことを積み上げた結果、この「空腹」が出来上がってきたんです。デモが上がって聞いた時、まずポエトリーってところが自分自身の音楽性にはなかったので、これを自分が歌ったらどうなるかってことは本当に想像がつきませんでした。だから最初は合致するって感覚ではなかったです。
歌詞については、正直怖かったですね。何故なら、自分が「SYM-BOLIC XXX」を作るに当たって思い直したことであったり、言いたくても言えなかったことであったり、でも今言わなきゃいけないんじゃないかって吐き出しておきたいことが全部書いてあったから……。これを洗いざらい自分自身で今後書けたかって自分に問うと、「いや、書けないんじゃないか」って思ったんですよね。代筆してもらったような気分でした。

●実際それを歌ってみてはいかがでしたか?

VALSHE:  

すごくスタイリッシュなサウンドの中で、根底の心情ってところを抉り抜いている歌詞なので、そこのアンバランスさが客観的によりクールに映るのかなっていう風にも思っているんですけど、個人的な心情としてはこれを歌ったり聞くたびにすごく泣きそうになるんですよね。

●リスナーの反応が楽しみですね。

VALSHE:  

そうですね。ポエトリーって時点でみんなの反応が楽しみな部分もありますし、この楽曲ってなんかクセになる曲だと思うので、どんな風に受け取ってもらえるのか楽しみです。

●焚吐さんは出来上がって何か感想は言ってましたか?

VALSHE:  

感想らしい感想は言ってなかったんですけど、自分がプリプロで歌を入れた時に、「ポエトリーやっぱりいいですね」って淡々と言ってました(笑)。今回焚吐にコーラスでも参加してもらっていて、焚吐自身も「こういう風にコーラスが入ってきたら、こういう風に思ってもらえるかもしれない」って感じですごく意欲的に作ってくれていたので、自分も制作していてとても楽しかったです。

●さて、7月からライブツアーが始まりますね。今回はアコースティック編成でのツアーになるんですか?

VALSHE:  

はい。理由は2つあって、1つは10周年を見据えた時に、小編成で色んな場所に行きたいと思ったからです。これまでは東名阪を中心に、九州、北海道、仙台あたりまでだったんですけど、どうしてもそれ以外の地域の人たちの所にも出来る限り会いに行きたいという思いがあって、VALSHE史上最大の公演数を開催することにしました。やっぱり10年目を目前にした今、常日頃応援してくれている人たちに出来るだけ会っておきたいと思ったんですよね。それに、その日、その場所で、同じライブって二度とないじゃないですか。そこで見える景色って1つ1つ違うから、新しいものが見たいなってところも今回12都市で開催したいと思った大きな理由です。
そしてもうひとつ大きな理由としては、「SYM-BOLIC XXX」で掲げたテーマに通じてくるんですけど、今回自分の気持ちにより向き合ったところで、自分自身発信する言葉であったり、気持ちであったりをより近い距離で伝える必要があると思ったんです。ライブでもファンクラブイベントでも、エンタメに振れば振るほど、最初から最後まで自分がやることも決まっていることの方が多いんですよね。特に去年の「YAKUMO」ライブは本編で一度もMCがなかったですし、そういう中で音を追求して、歌を追求して、言葉として発信する。そして12都市を回ってその都度感じることであったり、今言いたいことであったりをちゃんと正面から伝えたいなって思ったんです。今作は収録曲全て自分の中ではサウンドにおいても、歌詞においても変わったなって思える作品なので、その変わった気持ちを持ってツアーに行きたいと思った時に、アコースティックライブがいいなと思ったのが最も大きな理由です。

●今回はスケジュールが3つのステージタイプに分けられていますよね?

VALSHE:  

はい。1つがstage「TheTA」で、1つがstage「mu」で、3つ目はraid stage「EpsiLOn」の3つのタイプに分かれている中で、シンプルに「TheTA」と「mu」は編成が変わります。やっぱり楽器が一つ変わるだけでガラッとその曲の印象だったり、物語まで違って見えたりするんですよね。それがすごく面白くて、アコースティックだからこそよりその辺も楽しんでほしいなってところで、「TheTA」と「mu」は単純に編成を変えたいと思っています。「EpsiLOn」は日程も場所も公表されていないんですけど、アコースティックならではもあり、12都市を回るロードツアー的要素も兼ねていて、VALSHEがその時感じたことを歌として、言葉として伝えるってことに着目した時に、それこそraid stageですから、不意に何が来るか分からない、いつどこで告知が来るかも分からないっていう、ちょっとこれまでにない動きをしようかなと思っているので、ドキドキして待っていて欲しいなと思います。

VALSHE 12th SINGLE『SYM-BOLIC XXX』